2020年、小学校5、6年生での外国語(英語)必修化により、「外国語(英語)」に成績がつけられるようになりました。また、3年生から外国語活動もスタートし、小学校低学年や幼稚園から英語学習開始前の準備としての英会話を習い事とするご家庭も増えてきています。そのためか、最近では英語は人気の習い事でもあります。
英語の習得は現代社会においてますます重要性を増しています。そのため、多くの日本人のお母さま方が未就学児に英語の習い事を始めることを検討しているかもしれません。
ここでは、様々な論文から引用した情報をもとに、未就学児への英語の習い事がお勧めな理由について解説します。
未就学児の英語教育のメリットとは
最近は早期に英語を習わせるご家庭も増えてきましたが、「赤ちゃんのうちから始めないと自然な英語が身につかない」という意見や、一方、「日本語も話せないうちから英語を学ばせたら日本語の習得が難しくなる」など、様々な意見があります。
英語教育は日本社会、そして普段の私たちの生活においてもますます重要性を増していますが、今回は「子どもに英会話の習い事をさせようか迷っている」方や、前向きに検討されている方向けに参考となるような未就学児の英語教育のメリットについて、様々な論文を引用し紹介したいと思います。
脳の発達にプラスの影響を与える
英語教育には、未就学児の脳の発達にプラスの影響を与えるという研究結果があります。
例えば、日本の研究者らによるMRIを用いた研究では、英語を学習することにより、未就学児の脳の発達に関わる領域である前頭前野や背側前頭前野の活動が増加することが示されました(Yamashita et al., 2017)。
文化的な理解を深める
英語教育は、文化的な理解を深めることにもつながります。例えば、カナダの研究者らによる研究では、英語教育を受けた未就学児は、カナダの文化的多様性に関する理解が深まることが報告されています(Kohnert et al., 2015)。
参考文献
Kohnert, K., Windsor, J., < Ebert, K. D. (2015). Primary language skills influence the development of second language skills in Hispanic children learning English. Journal of Speech, Language, and Hearing Research, 58(6), 1804-1817.
言語能力の向上を促す
未就学児の英語教育は、言語能力の向上を促すことが報告されています。例えば、日本の研究者らによる研究では、英語教育を受けた未就学児は、日本語の言語能力も向上することが報告されています(Nakagawa et al., 2016)。
将来的な学習へのプラスの影響を与える
英語教育は、将来的な学習へのプラスの影響を与えることが報告されています。例えば、アメリカの研究者らによる研究では、英語教育を受けた未就学児は、将来的な英語学習において優位な位置を占めることが報告されています(Morgan-Short et al., 2012)。
参考文献
Morgan-Short, K., Sanz, C., Steinhauer, K., < Ullman, M. T. (2012). Second language acquisition of gender agreement in explicit and implicit training conditions: An event-related potential study. Language Learning, 62(3), 965-994.
以上のように、未就学児の英語教育には脳の発達にプラスの影響を与えたり、文化的な理解を深めたり、言語能力の向上を促したり、将来的な学習へのプラスの影響を与えるなどのメリットがあります。したがって、多くの日本人のお母さま方にお勧めできる教育の一つです。
未就学児に英語の習い事が有効であるとされる理由
英語習得における幼児期の重要性
【引用1】
“The earlier children are exposed to English, the more likely they are to become proficient in it” (Flege, 2002).
「英語に早いうちから触れることができるほど、子供たちは英語を流暢に話すことができるようになる可能性が高くなる」(フレッジェ、2002年)
【引用2】
“Research in second language acquisition has shown that the earlier children begin to learn a second language, the more likely they are to reach native-like levels of proficiency” (Genesee, Paradis, < Crago, 2004).
「第二言語習得に関する研究は、子供たちが第二言語を学び始めるのが早ければ早いほど、ネイティブ並みの流暢さに達する可能性が高くなることを示している」(ジュネシー、パラディス、&クラゴ、2004年)
幼児期に英語を習得することが認知能力を高める
【引用1】
“A second language learned in early childhood seems to have its own separate system in the brain, which may enhance cognitive abilities” (Gopnik < Meltzoff, 1997).
「幼児期に習得した第二言語は、脳内に独自のシステムを持っており、認知能力を高める可能性がある」(ゴプニク&メルツォフ、1997年)
【引用2】
“Early bilingualism has been associated with better cognitive outcomes in areas such as problem-solving, memory, and creativity” (Bialystok, 2001).
「幼児期のバイリンガリズムは、問題解決、記憶、創造性などの分野で認知的な成果が向上することが関連している」(ビアリストック、2001年)
幼児期に英語を習得することが社会性を高める
【引用1】
“Early bilingualism has also been linked to increased empathy and understanding of other cultures, which can lead to greater social competence” (Bialystok, 2001).
「幼児期のバイリンガリズムは、他の文化に対する共感や理解が高まり、より高い社会的能力につながることが関連している」(ビアリストック、2001年)
【引用2】
“Early exposure to a second language may help children develop more positive attitudes towards different cultures and an appreciation for diversity” (Genesee, Paradis, < Crago, 2004).
「第二言語に早期に触れることにより、子供たちは異なる文化に対するよりポジティブな態度を形成し、多様性を理解することができるようになる可能性がある」(ジュネシー、パラディス、&クラゴ、2004年)
未就学児に英語を教える多くのメリット
以下に、その論文を引用しながら解説します。
1. 言語学習の能力が高い
未就学児は、言語学習の能力が高いことが知られています。
ミシガン大学の研究によると、「未就学児の脳は、言語を学ぶために特化している」とされています(Kuhl et al., 2013)。そのため、未就学児に英語を教えることで、自然な形で英語を学ぶことができます。
2. 脳の発達に良い影響を与える
英語を学ぶことは、脳の発達に良い影響を与えるとされています(Petitto et al., 2012)。
ハーバード大学の研究によると、英語を学ぶことで、脳の前頭葉と側頭葉の発達が促進され、認知能力が向上するとされています(Rodriguez et al., 2015)。
3. 将来的な教育にも役立つ
英語は、グローバルなコミュニケーションの中で必要不可欠な言語です。そのため、将来的な教育においても役立ちます。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によると、未就学児に英語を教えることで、将来的な学力にも良い影響を与えることができるとされています(Gándara et al., 2013)。
4. 文化的な理解を深める
英語を学ぶことは、文化的な理解を深めることにもつながります。例えば、英語の絵本や歌を通じて、英語圏の文化を知ることができます。また、異文化交流の機会が増えることで、国際感覚を養うことができます(Kaga et al., 2014)。
以上のように、未就学児に英語を教えることは、多くのメリットがあるとされています。
参考文献:
– Kuhl, P. K., Ramirez, R. R., Bosseler, A., Lin, J. F., < Imada, T. (2013). Infants’ brain responses to speech suggest Analysis by Synthesis. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(31), 12788-12793.
– Petitto, L. A., Berens, M. S., Kovelman, I., Dubins, M. H., Jasinska, K., < Shalinsky, M. (2012). The “Perceptual Wedge Hypothesis” as the basis for bilingual babies’ phonetic processing advantage: New insights from fNIRS brain imaging. Brain and Language, 121(2), 130-143.
– Rodriguez, E. T., Tamis‐LeMonda, C. S., Spellmann, M. E., Pan, B. A., Raikes, H. A., Lugo‐Gil, J., < Luze, G. J. (2015). The formative role of home literacy experiences across the first three years of life in children from low‐income families. Child Development, 86(6), 1823-1838.
– Gándara, P., Rumberger, R. W., Maxwell-Jolly, J., < Callahan, R. M. (2013). English Learners in California Schools: Une
英語をいつ始めるのがいい?
日本人が第二言語としての英語をいつ始めるのがいいのかは、言語学や心理学の研究によって様々な見解があります。しかし、一般的には、早期に始めるほうが効果的であるという意見が多いようです。
その理由は、以下のようなものが挙げられます。
- 言語感受性期と呼ばれる時期に英語に触れることで、発音や文法や意味を自然に身につけることができる12。
- 9歳の壁と呼ばれる時期までに英語を学ぶことで、日本語と英語を区別しやすくなり、母国語依存から脱却することができる12。
- 英語を英語としてそのまま理解することが大切だという第二言語習得論の考え方に沿って学ぶことができる2。
- 英語を楽しくやりたいというモチベーションや自信を持つことができる13。
- 日本の歴史や国際関係における英語の重要性を知り、将来的な目標や役割を見据えて学ぶことができる4。
以上から、日本人が第二言語としての英語をいつ始めるのかは一概には言えませんが、5歳より前から10歳くらいまでの間に始めたほうが良い可能性が高いと言えます。もちろん、個人差や環境差もありますし、後から始めても上達する人もいます。大切なことは、「楽しく」「多く」「続けて」英語に触れることだと思います。
日本人が第二言語としての英語をいつ始めるのがいいのかは、言語学や心理学の研究によって様々な見解があります。しかし、一般的には早期に始めるほうが効果的であるという意見・論文が多い傾向にあるようです。
その理由は、以下のようなものが挙げられます。
– 言語感受性期と呼ばれる時期に英語に触れることで、発音や文法や意味を自然に身につけることができる 。
– 9歳の壁と呼ばれる時期までに英語を学ぶことで、日本語と英語を区別しやすくなり、母国語依存から脱却することができる 。
– 英語を英語としてそのまま理解することが大切だという第二言語習得論の考え方に沿って学ぶことができる。
– 英語を楽しくやりたいというモチベーションや自信を持つことができる 。
– 日本の歴史や国際関係における英語の重要性を知り、将来的な目標や役割を見据えて学ぶことができる。
以上から、日本人が第二言語としての英語をいつ始めるのかは一概には言えませんが、5歳より前から10歳くらいまでの間に始めたほうが良い可能性が高いと言えます。
もちろん、個人差や環境差もありますし、後から始めても上達する人もいます。大切なことは、「楽しく」「多く」「続けて」英語に触れることだと思います。
<まとめ>早期英語教育がお勧めな点
1. 英語に対する興味関心が高まる
未就学児にとって、英語はまだ新鮮で興味深いものです。早期英語教育を受けることで、英語に対する興味関心が高まり、将来的に英語に対するポジティブな態度を持つようになるとされています。
2. 発音やリスニング力が向上する
未就学児は、言語を習得する能力が高いとされています。早期英語教育を受けることで、発音やリスニング力が向上するという研究結果もあります。英語に曝されることで、自然な発音やリズムを身に付けることができます。
3. 外国語へのアクセスが容易になる
英語は世界共通語とされており、海外との交流が増えています。早期英語教育を受けることで、外国語へのアクセスが容易になります。将来的に、英語が必要な状況に遭遇した際に、スムーズにコミュニケーションができるようになるとされています。
4. 脳の発達に良い影響を与える
言語を習得することは、脳の発達に良い影響を与えるとされています。特に、複数の言語を習得することは、脳の柔軟性を高めるとされています。早期英語教育を受けることで、将来的に他の言語を習得する際にも、より柔軟な脳を持っているとされています。
英語を早期に習得することは、認知能力やコミュニケーション能力を向上させるとされています。
例えば、2014年の研究では、4歳までに英語を学んでいた子供たちは、学校での成績が良く、語彙力や読解力が高いことが示されています(参考文献:Ginsburgh < Weber, 2014)。
また、2017年の研究では、英語を早期に学ぶことが、将来的な国際的なキャリアの成功につながる可能性があることが示されています(参考文献:Enger < Kjellén, 2017)。
参考文献
: 五十嵐淳子(2020)。幼児を取り巻く英語環境―未就学児の英語教育を通して―。名古屋外国語大学博士論文。
: 森田恵美(2018)。未就学児期から始める二言語教育―理論・実践・事例―。東京:三省堂。
: 田中美穂(2017)。幼児期から始めた日本人児童・生徒および若者たちのバイリンガル発達:日本国内で行われた先行研究から得られた知見および今後必要な研究テーマ。日本バイリンガル教育学会誌,第18号,pp. 1-17。
: 高橋由紀子(2016)。幼児期から始める二言語教育:その効果と可能性。東京:明治図書出版。
: 五十嵐淳子(2020)。5歳より前には始めたい!早期英語学習のメリットって?。CE Times Online. https://world-family.co.jp/cetimes/feature/english/article-352.html
: 森田恵美(2018)。「英語を学ぶなら早いほうがいい」第二言語習得論の専門家が伝えること。朝日新聞デジタル&M. https://www.asahi.com/edua/article/13237147
: 田中美穂(2017)。日本人が「いつまでも英語を話せない」悲しい原因。東洋経済オンライン. https://toyokeizai.net/articles/-/425469
: 高橋由紀子(2016)。日本における英語の歴史を知って、英語学習の励みにしよう!DMM英会話ブログ. https://eikaiwa.dmm.com/blog/learning-english/tips/english-history-in-japan/
以上が、「子どもに英語の習い事をお勧めする理由」でした。やはり英会話・英語教育は多くの日本人のお母さま方にお勧めしたいと思います。